「ダウンコートはダサい」って本当?お出かけの時にはマナー違反?

ファッション・ブロガー小林直子のお悩み相談 Vol.11】

◆「ダウン・コートは存在そのものがダサい」って本当ですか?

私は毎年冬にはダウン・コートを愛用してきたのですが、最近、友達に「ダウン・コートは存在そのものがダサい」と言われました。

彼の言い分によれば、個別ではなくダウン・コートというカテゴリー自体がオシャレとは縁遠く、“どうしてもダウンを買いたいなら、モンクレールくらい良質なものにしておくべき”とのことです。もちろん、その友達はダウンは持たず、ウールのコートで冬を過ごしています。

そこで質問なのですが、ファッションの世界には、ダウン・コートはダサいとみなすカルチャーや流派があるのでしょうか?

(友人はアラサーのゲイ男性で、ディオールなど、いわゆるブランドの服も好んで身につけているタイプです。都内在住で、海外に住んだ経験はありません。)

また、例えば高級レストランやホテルなど一流の場所へのお出かけには、ダウン・コートはふさわしくないのでしょうか?

たしかに、私にもダウン・コートがカジュアルな印象になりやすいということは理解できるのですが、たとえば、光沢のある表面やファーで装飾であったりすれば、ある程度のフォーマルな場所でも良いのでは?と感じるのですが。。。

真冬の寒さにはダウン・コートが一番だと考えているので、私は今後も着続けるつもりなのですけれども、否定的にみなす文化や人々がいるのであれば、そういったことを念頭において、場所によってはやめようと思っております。

(Qさん)

◆ファッション・ブロガー小林直子からのお答え

ファッションの歴史は、それまで、それはふさわしくない、着るべきではないと言われていたものを取り入れることにより進化、発展してきました。例えばパンツ(ズボン)です。19世紀末、女性はパンツをはいて公の場に出るべきではないと考えられていました。

それは労働や乗馬の際には許されたけれども、公の場にはふさわしくないし、女性が着るにはファッショナブルではないと考えられていました。けれども、現在、女性がパンツをはくのは当たり前のみならず、公の席に出席することさえ可能になりました。

それだけではありません。女性のパンツやパンツスーツは、ファッションの世界では「ファッショナブル」なものとして扱われ、パリ、ミラノ、ロンドン、NYのコレクションでも多く登場するようになりました。

同様のことがスポーツウエアやアウトドアウエアについても言えます。

以前は、スニーカーはスポーツウエアのため、ドレスに合わせるなどもってのほかであると考えられていました。

けれども、ここ数年のスポーツウエア及びアウトドアウエアのモード化の流れで、ドレスにスニーカーを合わせるルックはシャネルやディオール、ルイ・ヴィトンなどでこぞって取り上げられるようになり、今では、少なくともモードの世界においては、ドレス+スニーカーはファッショナブルなものという位置づけになりました。

では、もともとスポーツウエアもしくはアウトドアウエアであったダウンコートはどうでしょうか。

◆ダウンコートは90年代以降ランウェイに登場し続けている

ランウェイでダウンコートが取り上げられたのは1990年代のヨウジヤマモトが最初だったと思います。

表布にウールギャバジンを使った、構築的なダウンジャケットやダウンコートは、それまで単なるアウトドアウエアだったダウンコートが、これほどまでにファッショナブルで、モードにふさわしいものになるのかと、多くの人から大絶賛されました。

その後もダウンジャケットやダウンコートはランウェイにたびたび登場し続けています。つい先日終わったばかりの2020年秋冬のメンズコレクションでも、ドリスヴァンノッテンを始めいくつかのブランドのランウェイにダウンコートは登場しました。

ですから、少なくともモードの世界においては、「ダウンコートはダサい」、つまり、「ダウンコートはファッショナブルではないので着るべきではない」とは考えられていません。また、そんな流派があるかどうか、私は聞いたことがありません。

今までファッショナブルとは考えられていなかったアイテムをどのようにモードに昇華するか考えて形にするのがデザイナーたちの仕事であるので、あるカテゴリー全体を「ダサい」という言葉で否定する行為は、ファッションとも、モードとも、関係のないものだと言えると思います。

Qさんのお友達の意見は、Qさんのお友達の個人的な考えであって、それはファッションの世界の考え方ではありません。

次に、高級レストランやホテルなど一流の場所へのお出かけにはダウンコートはふさわしいか、ふさわしくないかという質問です。

◆あなたが行くのはリゾート地?都会の高級ホテル?古都の老舗旅館?

前述したように、モードの世界では、それまでふさわしくないとされていたアイテムやスタイルの取り入れが進み、スポーツウエアやアウトドアウエアのアイテムもファッショナブルである、十分にモードであると考えられているわけですが、それが誰でも、そしてどんな場面でも通用するかといったら、それはまた話が違ってきます。

例えば、スキー場で有名な高級リゾート地のホテルやレストランに入るときには、ダウンコートは、それがモンクレールではないとしても、全く問題ないでしょう。なぜなら、寒いところでダウンコートを、しかもスキーをするために訪れた人々が着るのはごく普通のことだからです。

では、スキー場ではない、都会の高級ホテルやレストランではどうでしょうか。

例えば、寒い2月、パリの高級ホテルにモデルのベラ・ハディットがダウンコートを着てチェックインしても、彼女はホテル側に歓迎されるでしょう。

なぜなら、彼女はモードの世界の人であり、存在自体が十分ファッショナブルであるからです。また、パリという土地柄、ホテルの従業員もアウトドアウエアも今はモードであるということを理解しているだろうと思いますので、なんら問題はないでしょう。

しかしこれが、日本の古都の格式高い老舗旅館で、モードの世界とは何も関係ない、ごく普通の一般人であったらどうでしょうか。その場合、いくらモンクレールのダウンコートを着ていたとしても、「格式高い老舗旅館にスキー用のコートを着たまま来た人」として、あまり歓迎されないかもしれません。

けれども、それが誰もが知るような有名なスキー選手であったとしたら、ダウンコートを着たスキー選手ということで、逆に歓迎されるということもあり得ます。

◆場所にふさわしいかは立場、場所、目的など、さまざまな要因と関係性による

その場所にふさわしいかふさわしくないかは、着ているもののブランドや値段でだけで決まるのではなく、その人自身の立場、場所、そこにいる目的など、さまざまな要因と、その関係性によって決定されます。それは例えばルイ・ヴィトンやヴァレンティノの10万円以上もするようなスニーカーだったら、どんなところへ行くのにもふさわしいのかといったら、そうではないというのと同じです。

ファッションの世界では、「ダウンコートはダサい」などとは考えられていませんが、ダウンコートを着ていく場所としてふさわしいところ、ふさわしくないところがあるのは事実です。

自分が訪れる場所はどういうところか、自分はどのように扱われたいのかを考えて、その時々によって、ダウンコートを着るかどうか決めるといいでしょう。

<文/小林直子>

【小林直子】

ファッション・ブロガー。大手ブランドのパターンナー、大手アパレルの企画室を経て独立。現在、ファッション・レッスンなどの開催や、ブログ『誰も教えてくれなかったおしゃれのルール』などで活躍中。新刊『わたし史上最高のおしゃれになる!』は発売即重版に

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